独
あの時も雨だった。
思い出すのはいつも雨。なぜだろう。
静かな時を過ごしていた。
静かになることが自分にできる唯一生き延びる方法だったのかもしれない。
楽しかったかと言われればどうだろう、きっとそうではない。
でも自分を形成したあの時は何故か恋しい。あれだけ辛く寂しかったのに。
前はその時の自分が今の自分と平行して暮らしているような感覚があった。
街を歩く孤独なあの時の自分を見ている。
それさえもあの時から遠ざかれば忘れてしまったんだ。
きっといまあの時の自分とすれ違っても気付かないだろう。
それだけ今は充実しているしあの時の自分とは違う場所にいる。
それはそれでとても寂しい。
でもそんなこと結果論に過ぎず当時の自分は今の自分に憧れるはずだ。